社員の顔と声をAIにする前に決める5つのこと——令和8年改正を見据えて
社員の顔と声からAIアバターを作るとき、「本人がいいと言っているから大丈夫」で進めると、退職したときに困ります。顔や声から取り出した特徴データは、個人情報保護法で「個人識別符号」として扱われる情報です。さらに令和8年の改正では、顔特徴データ等について新しい規律が入りました。この記事では、作る前に決めておくべき5つを、公式の資料を引いて整理します。
目次
この記事は法律の解説ではありません。 当社は法律の専門家ではなく、ここに書いたのは公開されている公式資料の要約と、実務で決めておくことの整理です。実際の契約・社内規程は、弁護士など専門家に確認してください。
まず、顔と声のデータは「個人情報」です
「社内の人だから」「本人が了解しているから」で済む話ではありません。
個人情報保護法では、本人を認証できる形にした特徴データが「個人識別符号」として扱われます。顔については、骨格・皮膚の色・目や鼻や口その他の顔の部位の位置や形状から取り出した特徴情報。声については、声帯の振動・声道の形状などから取り出した特徴情報です。
AIアバターは、まさにこの2つを作るところから始まります。 撮影した映像から顔の特徴を、録音した音声から声の特徴を取り出して、再現できる形にします。つまり、アバターを作ることは個人情報を取り扱うことです。
令和8年の改正で入る、顔特徴データの新しい規律
【事実】個人情報保護委員会の資料(令和8年4月・個人情報保護法等の一部を改正する法律案について)より。2026-10-01 確認。
改正法は 令和8年7月10日に成立、7月17日に公布されました(個人情報保護委員会の公表)。施行期日は原則として公布の日から起算して2年を超えない範囲内とされています。
なぜ規律が入るのか(委員会の説明)
資料には、こう書かれています。
生体データのうち顔特徴データ等は、本人が関知しないうちに容易にそれゆえに大量に入手可能であり、一意性及び不変性が高く特定の個人を識別する効果が半永久的に継続するため、取扱いが本人のプライバシー等の侵害につながる可能性がある
「一意性」と「不変性」と「半永久的」——この3つが、顔と声のデータが特別扱いされる理由です。パスワードと違って、変えられません。
何が変わるか
資料には、3つが挙げられています。
| 変わること | 中身 |
|---|---|
| 周知の義務化 | 顔特徴データ等について、取扱いに関する一定の事項の周知が義務になる |
| 利用停止等請求の緩和 | 本人が「使うのをやめてほしい」と言いやすくなる |
| オプトアウトの禁止 | オプトアウト制度に基づく第三者提供ができなくなる |
施行はまだ先ですが、いまアバターを作るなら、これを見越した形にしておくほうが手戻りがありません。 特に「本人が止めてと言ったとき」の扱いは、いま決めておく価値があります。
作る前に決める5つ
① 何に使うか(利用目的)を、具体的に書く
「広報活動のため」では足りません。 どこに出すのかまで書いてください。
- 自社のSNS(Instagram・TikTok・YouTube)への投稿
- 自社のWebサイトへの掲載
- 広告としての配信(ここは分けて書く。本人の受け止めが変わります)
- 採用説明会・展示会などでの上映
あとから広告に使いたくなったとき、「広報活動のため」しか書いていないと、取り直しになります。
② いつまで使うか
- 在籍中だけか、退職後も使ってよいか
- すでに公開した動画を、退職後も残してよいか
- 期間を区切るか(1年ごとに同意を取り直すなど)
いちばん揉めるのがここです。 「退職後は新しく作らないが、公開済みのものは残す」のように、新規作成と公開継続を分けて書くと現実的です。
③ 撤回できるか・撤回されたらどうするか
- 本人が「やめたい」と言ったときに、受け付けるか
- 受け付けたら、アバターと声のデータを消すのか
- 公開済みの動画は下げるのか、残すのか
- いつまでに対応するのか(「速やかに」か、日数を切るか)
令和8年の改正は、この「やめてほしい」を言いやすくする方向です。 言われてから考えると間に合いません。
④ 誰に渡るか
- アバターの生成に、外部のAIサービスを使うか
- そのサービスが国外にあるか(国外にある場合、本人への説明の仕方が変わります)
- 制作を外注する場合、外注先に何が渡るか
AIアバターは、ほぼ必ず外部のサービスを経由します。 「社内だけで完結する」と思って同意を取ると、説明が足りないことになります。
⑤ AIで作ったことを、どう表示するか
これは本人との話ではなく、見る人との話です。 2つは別で、両方そろえる必要があります。
TikTok・YouTube・Meta の3社とも、本物に見える人物をAIで作った映像には表示が必要です。詳しくは AIで作った動画に「AI」と表示は必要? にまとめました。
同意書に入れる項目(チェックリスト)
上の5つを、書面の形に落とすとこうなります。
| # | 項目 | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 1 | 何を取得するか | 顔の映像・音声と、そこから生成する顔・声の特徴データ |
| 2 | 利用目的 | 自社SNSへの投稿/自社サイトへの掲載/広告配信/社内外の説明会での上映 |
| 3 | 外部への提供 | 生成・制作に利用する外部サービス(国外にある場合はその旨) |
| 4 | 利用期間 | 在籍中/退職後の新規作成の可否/公開済み動画の扱い |
| 5 | 撤回 | 撤回の申し出先・受け付けたあとの対応・対応までの期間 |
| 6 | 問い合わせ先 | 社内の担当部署・連絡先 |
【意見】この6項目は、当社がお客様と進めるときに確認している内容です。法的な十分性は保証しません。社内規程にする前に、専門家に見てもらってください。
退職・撤回のときに、実際に何をするか
決めただけで運用が無いと、同じことが起きます。 手順まで決めておいてください。
- 誰が気づくか。 退職の連絡が、動画を作っている担当者まで届く経路があるか
- 止めるものは何か。 新規制作の停止/制作中の案件の扱い/予約投稿の取り消し
- 消すものは何か。 アバターのデータ/声のデータ/元の撮影素材
- 残すものは何か。 公開済みの動画(残すなら、同意書にその旨があること)
- 外注先への連絡。 制作を外に出しているなら、同じことを伝える
制作を外注しているなら、外注先の契約にもこの5つを書いてください。 自社だけ決めても、外注先が消さなければ意味がありません。頼むときの確認項目は AIアバター動画とは——頼むときの7つの確認 にまとめています。
まとめ
- 顔と声から取り出した特徴データは「個人識別符号」。本人を認証できる形にしたものが対象です
- 令和8年の改正(成立 7/10・公布 7/17・施行は公布から2年を超えない範囲内)で、顔特徴データ等に周知の義務化・利用停止請求の緩和・オプトアウト禁止が入ります
- 作る前に決める5つ=利用目的/期間/撤回/誰に渡るか/AIの表示
- 「新規作成の停止」と「公開済みの扱い」を分けて書くと現実的です
- 外注先の契約にも同じことを書く。自社だけ決めても足りません
- この記事は法律の解説ではありません。社内規程にする前に専門家に確認してください
当社の アバティファイ では、ご本人の同意の動画をいただいてからアバターを作ります。ご本人以外の映像からは作成しません。契約終了時のアバターと声のデータの扱いは、利用規約に定めています。
この記事についてよくあるご質問
社員の同意があれば、AIアバターを作って問題ありませんか?
同意は前提ですが、それだけでは足りません。何に使うのか(利用目的)、いつまで使うのか、退職したらどうするのか、撤回できるのかを、同意を取るときに書面で決めておく必要があります。決めずに進めると、退職や撤回のときに判断できなくなります。
顔や声のデータは個人情報にあたりますか?
本人を認証できる形にした特徴データは、個人情報保護法の「個人識別符号」にあたるとされています。顔の骨格や目鼻口の位置・形状から取り出した特徴情報、声帯の振動や声道の形状から取り出した特徴情報が該当します。
令和8年の改正で何が変わりますか?
顔特徴データ等について、取扱いに関する一定の事項の周知が義務化され、利用停止等請求の要件が緩和され、オプトアウト制度に基づく第三者提供が禁止されます。改正法は令和8年7月10日に成立、7月17日に公布され、施行は原則として公布の日から起算して2年を超えない範囲内とされています。
「撮影と編集を外に出す」を検討されるなら
アバティファイは、ご本人のAIアバターが話すショート動画を、台本づくりから編集・広告規制のチェックまで引き受けて納品するサービスです。撮影は最初の1回だけで、以降は御社からメッセージでご依頼いただくだけ。プランは月の本数で決まる3つで、1本ごとの見積もりはいりません。
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